南さつま市サロン会議(2022.11.3)に参加してきました

南さつま市サロン化プロジェクト 観光

最近、私の暮らす南さつま市で「南さつま市サロン化プロジェクト」という動きがあることを知った。最初聞いた時には「何それ?よくわかんない。なんか怪しい…」という印象だったけれど、観光協会と市、県も絡んだ公的(?)なプロジェクトっぽい。

ざっくり言えば、南さつま市の関係人口を増やし、住んでいる人も地域外から関わる人も、ワクワクするような地域を創ろう!ということ、なのだと認識している。「南さつま市サロン会議」は、そんな未来について皆で集まって考えてみよう!という会議だ。

ここ数年は直感で動くことがほとんどで、仕事の依頼や遊びの誘いを受けるかどうかも、結構直感で決めている。でも、それで割と上手くいっている。このプロジェクトについて初めて説明してもらった時「面白そう」だと感じた。今回、幸運なことに主催者の柳下さんから声を掛けて貰えたので、2022.11.3 南さつま市サロン会議に参加してきた。

この記事は自分の頭の中を整理するための単なる備忘録だ。しかし、居住地に関わらず、地域の現状を変えたいけれど、自分の力じゃどうにもならないよね…と諦めモードに入っている人にとって、何かのヒントとなるかもしれない。

講演「観光から紐解く、南さつま市の現状」の感想

講師はリクルートじゃらんリサーチセンターの恒松昇平さん。初っ端からタイトルについて「現状を説明するなんておこがましいことはできないけれど、現状を知るための考え方を紹介します」と謙虚さ溢れる導入の挨拶。お話も事実と分析・感想がはっきり切り分けられており、同一の事象であっても主語によって解釈は異なる、という主張をされていた。内容がすーっと頭に入ってきたし、内容以前に言葉の使い方にセンスを感じた。

観光とは何か?

辞書的な意味で言えば、観光とは次の通りだ。

日常の生活では見ることのできない風景や風俗、習慣などを見て回る旅行

ただし、主語が変われば「観光」の意味も変わってくる。ある人にとっては「ストレス発散」かもしれないし、またある人にとっては「お金を稼ぐ手段」や「友達を増やすツール」ともなり得るだろう。

じゃあ、自治体にとっての「観光」ってなんだろう?どうして各地の自治体が観光に力を入れているのか?という問いに対して、恒松さんは「即金性」があるからという趣旨の説明をされていたと思う。

たしかに、観光は物を作って売るのに比べるとコストは安く済むし、個人レベルでも民泊程度であれば初期投資もほとんどゼロで参入できる。近くに綺麗な海や川でもあれば最高で、それだけでも都会から人が集まってくるかもしれない。地域の経済を活性化させるために移住者を1人引っ張ってくるよりも、数人の観光客を呼び込む方が手っ取り早いというのも納得だ。「自治体」を主語に置いたとき、「観光」は経済を活性化させるための手段となるようだ。

観光は人口の減少対策として有効か?

日本の人口が減少していることは今や誰でも知っている。そして、都会よりも地方の方が人口減少が激しいというのも周知の事実だ。人口が減るとインフラも衰退して生活が不便になるから問題だよね、という話もまぁわかる。本当にそれは問題か?という疑問は一旦置いておいて、人口減少は日本全体、特に地方において多くの人から問題視されている。

ツイッター社を買収した富豪イーロン・マスク氏のツイートも紹介された。

当たり前のことだけど、出生率が死亡率を上回るような変化がない限り、日本はいずれ存在しなくなるだろう。これは世界にとって大きな損失となる。

では、この人口変動について、もう少し解像度を上げて見ていく。恒松さんのお話によると、人口変動には次の2種類があるとのこと。

  • 自然増減:死亡数と出産数の差
  • 社会増減:地域への流入数と流出数の差

自然増減については個人の力でコントロールすることは無理だろう。いや、行政・国レベルでも今の減少に歯止めをかけられるほどの対策は無理かもしれない。そうなってくると、人口減少による経済の衰退を防ぐためには、必然的に社会増減への対策が必須となる。要するに、日本や地域に来てくれる(住んでくれる)人を増やす必要があるということだ。ここまでは「そりゃそうだよね」というお話。

こういった話をする際によく、次のような暗黙の前提で話が進められることが多いような気がしている。

  1. 人口減少は問題なので、解決(対策)しなければならない
  2. 解決するためには関係人口を増やし、経済を活性化しなければならない
  3. 経済を活性化するためには地域の魅力を高めつつ、情報発信する必要がある

恒松さんはこの点についても抜かりなく、さらっと触れただけだったが「南さつま市にとってこれは問題か?」と問いを提示していた。

アンケートを取ったわけではないので実際のところはわからないが、会場の空気感としては「問題だ」と考えている人が多いのではないかと感じた。私自身も「おそらく自分自身は困らないけれど、現状のままだと困る人はいっぱい出てくるだろうな」と考えているので、きっとアンケートを取られれば「問題だ」と答えると思う。ただ、解決策として観光が最適かと言えば、そうではないと主張する。

観光で地方を救えるか?

次の図は講演中に提示された資料の一部で、日本と鹿児島県の人口増減(2020年データ)を図示したものだ。赤色の地域ほど前年比で人口が増加しており、青色の地域ほど減少している。

この図からわかることは、観光に力を入れている地域であっても、ほとんどの地域で人口は減少しているということだ。日本全体の人口が減り続けているのだから、当然と言えば当然だ。いくら旅行先が魅力的だったからといって、それで移住を決めるのはほんの一部に過ぎない。

では、観光客が増えて地域経済が活性化すれば、地方は良く(住みやすく)なるのか?という問いが発生する。講演では観光振興によって、入込客数UP→売上UP→所得UP→地域内経済循環UP、に繋がることが提示されていた。その通りだと思う。思う……のだけど、これが住みやすさ、ひいては住民の幸福度UPに直結するかと言えば疑問だ。

たしかに他地域から多くの人が集まれば、サービス施設の出店は増えるだろうし、交通インフラも充実するだろう。イベントなどの開催も増えて地域に活気が生まれるかもしれない。ただし、人口は減っていく。遊びに来る人は増えるが、そこに住んでいる人は確実に減っていくのだ。地域に魅力を感じた移住者が増えれば、ひょっとしたら一時的には人口増加もあり得るかもしれない。しかし、日本全体の人口が減り続けている以上、観光レースで他の地域と競争し、勝ち続けなければ来客数は減っていく。当然、住民数も減っていく。住民のいない街に人が群がる。それはもはやただのテーマパークではないだろうか。

人が減っていく社会での暮らし方についての考察

じゃあ今後、さらに人が減っていく社会で暮らしていくにはどうしたらよいのか?

個人の能力や社会的地位、価値観によっても色んな解があるとは思うが、私自身は「適応すること」が最適解なのではないかと考えている。おそらく地方は今後も経済的に衰退していくし、それを避けようとしても、時間、労力、人材、運など、自分の力ではどうしようもない要素も絡んでくるだろう。

それなら、無理に足掻いて利便性の維持を求めなくてもよいのではないだろうか?利便性や娯楽を求めるなら街へ出て暮らせばいいし、地方に魅力を感じる価値観を持っているのであれば、自分自身が不便さに適応していけばいい。「お前、今はそんなこと言ってるけど年取ったら無理だぞ」とか「住み慣れた土地を離れるのは嫌だ」といった声が聞こえてきそうだが、たぶん、なんだかんだいってほとんどの人は環境が変わっても上手に適応して生きていけると思っている。

都会、地方のどちらを居住地として選んだとしても、一生その土地から離れられないという縛りや制限はない。それに、いくら地方と言っても今の時代は車で1~2時間も走ればそれなりに娯楽のある街まで出かけることもできる。本当に何も無いような田舎なら、自分たちで娯楽でも何でも作ってしまえばいい。少し厳しい言い方になってしまうが、娯楽がないと嘆くのは、その辺のものから娯楽要素を抽出して楽しむ能力が不足している、とも言えるのかもしれない。

恒松さんは最後に「他人と過去は変えられないが、自分と未来は変えられる」という言葉を紹介して講演の結びとされた。

私は、他人を変えることは絶対に不可能だとは思わない。しかし、自分が不動のまま、他人や周囲の環境を変えようとしても膨大な力が必要だし、そもそも初めから無理だってこともある。それなら、自分が変わる、もしくは自分が移動して周りの環境を変えるという手段を取ったほうが実現しやすそうだし、たぶんそっちの方がラクだと思う。必死になるのはここ一番の時だけにして、あとはみんな、ラクに生きればいいと思う。

ただ、皆が無理だと思っていることが実現される瞬間を見るのは好きだ。私自身は観光の力で地方創生しよう!という熱い思いは持ち合わせていないので、無理して犠牲を払ってまでプロジェクトに取り組むつもりはない。無論、プロジェクト側も持続性を重視しているので、そんな事は全く望まれていないことは承知している。今後も丁寧に、楽しく暮らしつつ、無理のない範囲で、ゆるーい感じで「南さつま市サロン化プロジェクト」を応援していきたい。

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